青森駅近くには二つの大きなビルがある。一つは青森港を臨むアスパム。もう一つが駅前のアウガである。このアウガ、地元では大変な問題になっている建物なのだ。第三セクターで建てられた商業ビルだが、経営が厳しく、何度も危機を乗り越えたが、ついに破綻。青森市が引き取ったのだ。
久しぶりにアウガに行ってみると、地上階が市役所になっていた。地下に降りると生鮮市場なのは変わらない。客がほとんどいなくて、活気もやる気も感じられない、市場なのかと目を疑うような場所だ。とても買い物をする気にはなれない。来るたびに同じことを思う。
第三セクターとは、官民で共同出資して設立した企業のことだ。市が設立に関わった場合、市長が社長に就くことがよくある。考えてみれば、多忙な市長が第三セクターの企業経営にがっぷり取り組めるはずもない。トップ不在の企業は番頭さんが回すのが常だが、これも役所上がりの方が専務だったりすると、経営経験のない人が企業経営することになる。
会社経営をした経験がある者からすると、恐ろしい仕組みだ。しかも、自分の金ではない、公金で設立されてるので、損をしたところで個人は痛くもかゆくもないのだ。中小企業の経営者が会社と一蓮托生なのと比べたら、まさに天国だ。
財政破綻で有名な夕張市は、経営が悪化した民間の観光施設を、夕張市が設立した第三セクターがどんどん買い取り、15年間で負債は600億円にまで膨らんだ。夕張市の年間予算は45億円だ。売上高45億円の会社に600億円を貸す銀行があるだろうか。トップが無責任、つまり経営責任を問われないからこそ、できることなのだ。
アウガを訪れた三週間後、特別清算が終了したという記事を目にした。債権放棄は18億円。これだけの公金が無駄になったのだ。私も会社を清算し、自己破産した。経営責任を問われたのだから、それなりのペナルティーは甘んじて受けるしかない。しかし、第三セクターが破綻して、誰かが責任を問われたという話はあまり耳にしない。
私の身近でも、例えば那覇市のとまりん。一時期、身売りのために入居していたホテルが閉館していた。沖縄市のコリンザ。ここも三セクが破綻して沖縄市が買い取った。今はハローワークになってたはずだ。館内がなぜか重苦しい雰囲気で、とてもショッピングモールではなかった。占いの館にすればいいんじゃないかと思ったことも。もともとが墓場だったからだとか、いろんな噂があった。
全国に第三セクターは数多くある。総務省のまとめによると、自治体が出資した額は総計で5兆円近い。債務保証している金額は4兆円近くある。累積赤字が資本を上回って債務超過になっていれば、市がそれらを保証なり補填しなければならない。ここにも公金が投入されるが、公金であるがゆえに誰の腹も痛まない。景気のいいときなら誰が経営しても上手くいくが、景気が厳しいと経営者次第でつぶれもする。
バブル期やバブル後に全国に乱立した第三セクターの後始末は、実はまったく終わっていない。隠れ負債があなたの街にもあるかもしれない。本来は公的な性質と民間のノウハウを融合した新しい企業体である。まともな三セクもあるのだろうが、地方が利益誘導のために設立したような、下心満載の三セクが泥沼化しているのだろうか。
50年ほど生きていれば、いろんな経験をするものだ。さほど破天荒な生き様だとは思わないのだが、あまり他人が知らないことを見知ってきたらしい。そんな私の人生の切れ端でも誰かの役に立つかもしれないなら、記録として残す価値はあるかもしれないなどと考えながらブログを更新している。(詳しく読む…)