父の四十九日

投稿者: | 7月 11, 2020

時が流れるのは早い。父が亡くなって、もう四十九日だ。遺言にあった散骨は家族会議で却下され、永代供養の合同墓地に納骨することになった。費用も破格に安い。四百年もの歴史を持つ大きな寺で、見学した母が一発で気に入ってしまい、生前予約してしまった。

父が亡くなって感じたのが、父と母の仲だ。子供の頃、家の二階で寝ていると、夜中に「離婚してやるー!」と怒鳴る母の声が聞こえてきた。その後も何かにつけて、母は父と喧嘩していた。父は独断専行型だったので、夫婦仲は良くなかった。だから私も家にいるのが嫌いで、子供の頃から旅行に行くのが好きだった。 そんな母が、父と同じ墓に入るという。私にすれば驚きでしかない。なんだかんだ言っても、最後まで添い遂げた母だ。やはり思いがあったのだなと、感じた次第だ。

父の葬儀だけはしっかりしたものの、それ以外はシンプルにと母が言うので、四十九日は家族で食事会にした。神戸牛を育てている知人から肉を買い、ステーキを焼いて食べることになった。届いたのは、みごとなサーロインにシャトーブリアン、ヒウチにモモ肉だ。

ヒウチとは内ももの下の肉で、モモでは最も差しが入る部位だ。いいミスジがないので、代わりに入れたと言うが、牛一頭から1kgしか取れない部位で、見た目にはサーロインのようだ。姪は和牛肉を初めて見るらしく、皿に盛ったこれらが肉だとは思わなかったらしい。

ミディアムレアのステーキにして、塩とワサビで食べると絶品だ。自宅ではない見られない、姪の肉の食いっぷりに、妹夫婦は目を丸くしていた。妹は姪の教育費のために食費を犠牲にしてるようで「これを食べたらファミレスのステーキは食べられないね。」とこぼしていた。