時が流れるのは早い。父が亡くなって、もう四十九日だ。遺言にあった散骨は家族会議で却下され、永代供養の合同墓地に納骨することになった。費用も破格に安い。四百年もの歴史を持つ大きな寺で、見学した母が一発で気に入ってしまい、生前予約してしまった。
父が亡くなって感じたのが、父と母の仲だ。子供の頃、家の二階で寝ていると、夜中に「離婚してやるー!」と怒鳴る母の声が聞こえてきた。その後も何かにつけて、母は父と喧嘩していた。父は独断専行型だったので、夫婦仲は良くなかった。だから私も家にいるのが嫌いで、子供の頃から旅行に行くのが好きだった。 そんな母が、父と同じ墓に入るという。私にすれば驚きでしかない。なんだかんだ言っても、最後まで添い遂げた母だ。やはり思いがあったのだなと、感じた次第だ。
父の葬儀だけはしっかりしたものの、それ以外はシンプルにと母が言うので、四十九日は家族で食事会にした。神戸牛を育てている知人から肉を買い、ステーキを焼いて食べることになった。届いたのは、みごとなサーロインにシャトーブリアン、ヒウチにモモ肉だ。
ヒウチとは内ももの下の肉で、モモでは最も差しが入る部位だ。いいミスジがないので、代わりに入れたと言うが、牛一頭から1kgしか取れない部位で、見た目にはサーロインのようだ。姪は和牛肉を初めて見るらしく、皿に盛ったこれらが肉だとは思わなかったらしい。
ミディアムレアのステーキにして、塩とワサビで食べると絶品だ。自宅ではない見られない、姪の肉の食いっぷりに、妹夫婦は目を丸くしていた。妹は姪の教育費のために食費を犠牲にしてるようで「これを食べたらファミレスのステーキは食べられないね。」とこぼしていた。
50年ほど生きていれば、いろんな経験をするものだ。さほど破天荒な生き様だとは思わないのだが、あまり他人が知らないことを見知ってきたらしい。そんな私の人生の切れ端でも誰かの役に立つかもしれないなら、記録として残す価値はあるかもしれないなどと考えながらブログを更新している。(詳しく読む…)