「昨日の飲み代、85万円だったんだよね。」
不意に私の耳に入ってきた声に、好奇心マックスとなった。カウンターに座る私の後ろのテーブル席で会話をしているのは40代くらいの男性二人。
そうですね、話している方を手稲、聞き役の方を白石とでも呼びましょうか。ハケン社員アタル、面白いですよね〜。原作なしのオリジナル脚本だそうですよ。
「あのシャンパンがね、45万円。」
金額からしてニュークラブの話だろうか。ここ札幌ではキャバクラとは呼ばない。それはエッチな店を指してしまうからだ。仙台あたりでもニュークラと言ったりする。
「いやあ、金の使い方は考えないとね。となりに付いた女の子の話を聞いたら、俺の飲み方なんて大人しいもんだよ。」
そうなのか。85万円あれば中古車が買えるぞ。私が飲み屋で使うことは一生ない金額だろう。
「12月のあいつの売り上げ、億超えたって。なんでも売上が一定額を超えると、売上を店と折半なんだって。」
「ええ?!じゃあ月給で数千万円?!」
白石が素っ頓狂な声を上げた。私も酒を吹き出しそうになった。
「そうなんだよ。」
手稲は話を続けた。
「誕生日の時なんて、客が特別なドンペリを10本空けて並べたって。」
「それだけで数百万円?!」
白石がまたもや驚く。
「それって、年収、億超えるだろ?税金対策とか大丈夫なのか?」
手稲は静かに話を続ける。
「なのにあいつ、生活が地味でさ。金を貯めてるらしいんだよ。もともと美容師なんだけど、美容系の店を自分で持ちたいって、東京で物件を探していた時期もあったらしいよ。」
「なかなかやるね。でも、飲み屋の娘が夜を上がって店をやるって、現実はなかなか甘くないだろうよ。」
「それがあいつ、勉強のために二年間、ニューヨークの店で働いてたんだって。」
「ええ?英語話せるの?」
なんだかすごい話である。一晩で何百万円も使うって、どんな商売してるんだろうか。札幌でこのレベルなら東京はもっとすごいのだろう。若いうちに数十億円も貯めて、それを元手に投資などで生活してる女性は、相当数いるはずだ。
沖縄のマンションでも買ってくれないだろうか。売るほどあるのだが(笑)
50年ほど生きていれば、いろんな経験をするものだ。さほど破天荒な生き様だとは思わないのだが、あまり他人が知らないことを見知ってきたらしい。そんな私の人生の切れ端でも誰かの役に立つかもしれないなら、記録として残す価値はあるかもしれないなどと考えながらブログを更新している。(詳しく読む…)