田舎のしがらみに絡み取られる企業経営の難しさ

投稿者: | 7月 11, 2020

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飲食店と仕入れとしがらみ

ここ数年でいくつかの飲食店を開店した知人と一緒に飲んだ時のことだ。知人のラーメン店で締めラー、締めのラーメンを食べようかと、店の閉店時間を尋ねたところ、意外な答えが返ってきた。

「ラーメン店は行かなくていいです。麺が不味いんです。」

ラーメン店にとってスープと麺はツートップだろう。肝心要(かなめ)ではないか。どういうことなのだ。

「知り合いの業者に麺をお願いしたら、店のスープと合わなくて…」

おいおい、味を追求すべき飲食店が、仕入れに人間関係を優先してどうするのだ。そりゃあ、知人が美味い麺を卸してくれれば理想形だろうが、それがかなわなければ自分が納得する麺を卸してくれる業者を探すものではないのか。

ああ、田舎だといろいろとしがらみがあるのだろうか。

そういえば、本日訪れているこの地、加古川は、あまり知られていないが丸亀製麺発祥の地だ。もとは加古川の居酒屋だ。それが上場時に地元でいろんなことがあり、人間関係に嫌気がさした社長が、この地と縁を切って神戸に移ったと聞く。

麺が仕入れられないとすれば、 そうなると自家製麺しか道がないのかもしれぬ。それはあまりにも負担なのだろう。

地方創生のための国の政策とは

田舎には見えないルールが必ずある。それも相当壁の高い、鉄の掟のようなものが。

それらに嫌気がさした人間は、必然的に都会を目指す。そうして様々な人材が日本中から集まり、経済も産業もますます発展していく。地方創生と国も地元も言うが、当事者達に地域を衰退させている自覚がない以上、何をしても無駄である。

いや、当事者たちも、分かっているのに身動きできないのである。 なぜなら、日本人は自分の身を切るような改革をすることができない。シャープや日産がいい例だ。

地方再生には「よそ者」「若者」「ばか者」の三者が必要だと説く人もいる。いずれも地域経済や社会の中心にいる人物たちではない。 アウトローだ。つまり、自分たちの手では、地域社会の掟やしがらみを壊して再生することができない、ビルド&スクラップができないと認めているようなものなのだ。他力本願なのだ。

だからこそ、誰も言わないが、地方社会に本当に必要なのは、今の硬直したしがらみを破壊してくれる、中央からの強烈な政策なのだ。これこそが国がやるべき地方創生なのだと私は思う。

厳しさを増す飲食店経営

自分がやればもっとうまくできるのになどと、外から見ると容易に回せそうな飲食店も、内実は複雑で大変なのだ。まして、自身が調理場やフロアに立つわけでもなく、人を雇って店を出すのはなおさら大変と聞く。飲食業界の人手不足はかなり深刻であり、外国人がいなければ成り立たない業界になりつつあるのだ。

私の勤める不動産会社が、とある土地を沖縄で仕入れた。那覇市内のわりと大きな飲食店の敷地である。かつてはそこそこ繁盛していたそうだが、数年前から人手不足が深刻となり、店のオペレーションが厳しくなった。そのために徐々にサービスや味のレベルが落ち、店の評判も悪くなり、ついには客が減って赤字に陥ったそうだ。ただ、店をオープンしたのがかなり前なので、土地は相当な値上がりをしており、経営者がこれを機会に店を閉めて仕事を引退し、土地建物ごと売り払うとのことだった。

経営者の多くが一度は手を出す、手を出したがると言っても過言ではない飲食店経営も、決して甘いものではないのだ。そして宿泊業、とくに宴会などのバンケットサービスを行う施設も同様に、外国人がいなくては商売が成り立たない時代なのだ。