夫婦喧嘩は犬も食わぬ ~沖縄女と大阪男~

投稿者: | 7月 11, 2020

会社の女性社員で、彼氏と同棲している先輩がいる。会社では私が上司だが、地元沖縄では先輩である。私をはじめ、社内では「ねーさん」と読んでいる。どちらかというと「姐さん」と書いた方がしっくりくるような気がしないでもないが、まあ「ねーさん」なのである。

今年初めに東京に転居し、結婚を視野に一緒に住み始めた。その彼氏と喧嘩が絶えないという。かねてよりその理由を聞いてはいたのだが、昨晩の食事会に会社の仲間の到着が遅れたために、しばし私と先輩の二人で食事をしていたので、改めて喧嘩について尋ねてみた。

相変わらず、だそうである。

なにが原因なのか聞いてみると、意外な答えが返ってきた。

「ごはんがおいしくない、不味いって言うのよね…」

ねーさんはバリバリのキャリアウーマンだった。若い頃に立ち上げた会社を沖縄で三十年近く経営してきたが、それを他人に譲って上京した。子供のころは両親が商売をしていた上に、兄弟が多かったので、家にはお手伝いさんがいて、食事は大皿料理が中心だったそうである。

おまけにねーさんは激しい偏食家でもある。

海苔は食べられるが刻み海苔は食べられないとか、鶏肉はだめだがササミはいけるとか、生魚が臭くて食べられないとか、ネギもダメだったような気がした。それでよく子供を育てられたね、と驚いたら「給食があるから、大丈夫。」と言い切っていた。すでに成人した子供たちは好き嫌いがないと言うのである。

対して彼氏は内地の育ち。ねーさん曰く、

「沖縄育ちで料理をしない私が、内地のおふくろの味なんてわかるわけないでしょう?!」

ねーさんの唯一の得意料理であるチャンプルーを彼氏は食べない。嫌いなんだそうである。

ここまで食が合わなければ、ほぼ外国人と変わらない。いや、それ以上かもしれない。私の前妻は中国人だが、朝は和食派だったし、嫌いな食材は豚肉くらいだ。豚肉を食べない中国人ってどうかと思ったが、小籠包や餃子など、皮で包まれているものは食べていた。そういえば、義弟の妻は北京ダックが食べられなかった。「愛鴨連盟に所属しているから。」といつも笑っていたが、なぜ食べられないのか、理由は知らない。

妻は好き嫌いがない。イチゴとナーベラー(へちま)が嫌いだと言っていたが、イチゴはたまたま機嫌が悪くて拒否したのを、意地を張って嫌いだと言い続けていただけだし、ナーベラーは私も好んで食べるわけではない。農協に行けば山積みで売られているが、もう何年も買った覚えがない。味噌汁に入れるとまあまあイケるのだが、けいたまが食べられる味ではない。

実はナーベラーは、蛤と一緒に調理すると死に美味いことが判明した。

私は好きではないが、世の中にはクックパッド等のサイトもある。参考にしてみてはと、ねーさんに勧めてみたが、あれは私には分かりづらいの、とぼやくのだった。ならばと、けいたま日記のおうちごはんを見せたところ、これなら私にもわかりやすいと喜んでくれた。鍋焼きうどん、肉豆腐に煮物。こんなのが作りたかったそうである。

ねーさんの家庭に平穏が訪れることを願うばかりである。