さくらももこさん、亡くなる ~台湾の思い出~

投稿者: | 7月 11, 2020

「ちびまる子ちゃん」の作者であるさくらももこさんが乳がんで亡くなった。53歳。

私と大して変わらない年齢である。

同世代の有名人が死んだらすると、本当に鬱になる。暗くなる。自分の人生も間も無く終焉を迎えるのではないかと、不安になる。アカシックレコードに刻まれた記録にアクセスせねばならぬのだろうか。

テレビやネットではちびまる子ちゃんの思い出や思い入れを語る人たちが大勢いた。私にも思い出がある。しかし、他人とはかなり大きく異なると思う。

今から二十年以上前、ときはまだ二十世紀。私は仕事で頻繁に台湾を訪れていた。自社で開発した電子辞典ソフトを現地で販売するためだ。

台湾、中華民国の公用語は北京語。大陸、中華人民共和国の公用語も北京語であるが、字が違う。台湾で使用されている漢字は、昔の文字そのままだ。繁体字中国語と呼ぶ。対して大陸で使用されているのは簡体字中国語。中国共産党が定めた、簡略化した漢字だ。香港はもともと英語と広東語が公用語で、文字は台湾と同じく繁体字中国語であったが、中国に復帰してからは北京語が公用語となり、簡体字中国語も散見されるようになった。

台湾の街中風景。繁体字が使用されている。

そしてこの二つの地域の北京語は同一ではない。昔からある単語は同じだが、コンピュータのように、戦後に生まれた言葉は異なることが多い。大陸では「計算機」、台湾では「電脳」。ドラえもんも台湾では「小叮噹」、大陸では「機械猫」だ。もっとも、最近は「哆啦A夢」(ドラえもん)と当て字に統一されている。

日本語でも「体」「国」のように簡略化した文字を使う。本来は「體」「國」である。日本での「机」「叶」は大陸では「機」「葉」を表す。このように漢字文化圏では、地域によって異なる字体が定められているのだ。

電子辞典ソフトでは出版社から辞書データを借りるのが一般的であった。台湾でもっともメジャーな英中辞典、それはコンサイス英和辞典であった。50歳以上の台湾人で英語を勉強したことがあるならば、知らない人はいないのではないだろうか。

コンサイス英和辞典。亡くなった父も使っていた。中学生の頃、見出し語の多いこの辞典でMasturbationなどの単語を調べて興奮していた、思春期の甘酸っぱい思い出のあるアラフィフ男性は少なくないはずだ。

出版元は三省堂。ところが台湾で出版されているコンサイス英中辞典の版元は大陸書房。実は海賊版なのだ。戦後、三省堂に無断でコンサイス英和辞典の日本語部分を中国語に翻訳し、名前も見た目もそのままに発売されたこの辞典は、五十年ほど前の台湾の法律改正により、合法とされてしまった。コンサイスの商標も取られてしまった。三省堂にとって、ある意味、黒歴史なのである。

同様にちびまる子ちゃん、台湾では櫻桃小丸子も、台湾の会社が無断で商標と著作権を登録してしまった。数年後にこのことを知った日本の出版社が登録無効の裁判を起こしたが、負けたというのだ。現在ではこの問題も解決されており、ネット上でもこの件について書かれた記事を見つけることはできなかった。

さくらももこさんの死去のニュースで、昔の嫌な思い出が思い起こされてしまった。台湾では仕事で何度も何度も煮え湯を飲まされた。デタラメの裁判も起こされた。金のためなら手段を選ばない、契約違反もなんのその、嘘をつくなど屁の河童。信用できるのは弁護士だけだ。バイキンマンと同じである。

「騙される方が悪いんだー!」

親日親日と人は言うが、私は台湾人とは二度と仕事などしたくない。

台湾女性は素敵なのだがなあ。