JR北海道について思う ~迷走する方向性~

投稿者: | 7月 11, 2020

夏の北海道は爽やかだ。湿度も低く、風が心地よい。陽射しも沖縄のように焼け付くようなものではなく、やんわりとしている。それでも建物の中は冷房がきいている。八月も下旬に差し掛かると、北の大地は短い夏の終わりを迎える。収穫の秋を過ぎれば、三月までは雪の中だ。

せっかくこの季節に北海道に来たのだから、ゆっくりしたいところなのだが、次の目的地に移動せねばならない。長野だ。長野に行くには、旭川空港から羽田まで行き、東京駅から新幹線で長野に行く方法、新千歳空港まで行き、松本行きの便で長野に入る方法がある。

羽田経由は乗り換えに時間がかかる。
松本行きは満席で、キャンセル待ちを入れていたが席が取れなかった。

そこで第三の方法、新千歳空港から富山まで飛び、新幹線で長野に入るのだ。なんと、富山から長野は「かがやき」に乗れば一駅だ。先日から北陸新幹線の便利さを体感している。地方が新幹線を欲しがる気持ちがわかると言うものだ。

特急サロベツ

名寄から新千歳空港までは、特急サロベツで旭川まで行き、特急ライラックに乗り換え、札幌でエアポート快速に乗り換える。以前なら一度の乗り換えで済んだのだが、ダイヤ改正のたびに乗り換えが増えた。旭川から新千歳空港までの直通がなくなり、次のダイヤ改正ではサロベツなどの特急が旭川発となった。電化区間にディーゼルカーは走らせない方針のようだ。

実際には、ディーゼルカーの走る距離を少しでも減らして、車両の点検回数を減らしたり、耐用年数を伸ばすための苦肉の策なのだろう。金がなくなると無理な節約が必要となり、利便性が損なわれる。利用者はさらに減り、より無理のある節約が図られる。そしてさらに利便性が損なわれて行く。その先にあるのは破綻だ。

特急ライラック

特急サロベツは旭川駅に着くと、向かい側に停まっている特急ライラックに乗り換えるよう案内される。確かに乗り換えは楽だ。階段を上り下りして、別のホームに行かなくてもよい。だが、自由席に座っていた客は、旭川で新たに席を確保しなくてはならない。指定席ならその心配はないが、重いスーツケースをゴロゴロと転がすのは、たとえ向かいの電車に乗り換えるだけでも一苦労だ。

何年も前のことだが博多—熊本間は1時間半かかっていた。九州新幹線が開通したら40分になった。博多が一気に近くなった。その昔、鹿児島から福岡市内の病院に通うのがものすごく大変だったのが、新幹線ができて1時間半で行けるようになったと言う。

旭川から札幌までは1時間半。JR北海道のドル箱路線だ。新幹線を作っても採算がとれるんじゃなかろうかと思う。旭川と札幌間も新幹線なら40分くらいだろう。今は4時間もかかる函館—札幌間も1時間である。

新幹線は地方の生活にイノベーションを起こすのだ。

ところが北海道新幹線は一向に進まない。最大の問題は車両の開発だと言う。北海道の大地を走るには、零下30度に耐えられる耐寒性能が求められる。ところが、そんな車両は北海道しか走らない。JR北海道以外には不要だ。JR東日本やJR東海が、ロシアやカナダなど、極寒の地域に新幹線を売り込まない限り、不要な車両なのだ。

私の記憶が確かなら、民営化した時に積み立てた基金すら、あと数年で底をつくと言われている。いまだに民営化時に引き継いだ車両を使っていて、それらが老朽化しているが、車両の更新ができない。富良野線や日高本線など、台風や大雨の被害にあった路線も直せない。その上、北海道専用新幹線車両の開発が必要なのである。もうJR東日本に救済してもらうしかないように思うのだが。

札幌駅では快速エアポートに乗り換えるために、別のホームに行かなければならない。重いスーツケースを持っているので、階段では厳しい。エレベーターかエスカレーターを使うことになるが、これが一箇所しかないので、ホームを歩かねばならない。改札階まで降り、再びエスカレーターで目的のホームに上がる。新千歳空港までが一苦労だ。

コスト削減も大事だが、削ってはならないところを削り始めたら、その事業も会社も終わりだ。もっと別に削るところがあるように思うのだが、JR北海道は何を目指してるのだろうか。