娘と横須賀に海鮮を食べ、いろいろと爆買いを終えてレンタカーを返した。駅前のブックオフで娘が用を済ませた後に、両親がいる実家へと向かう。娘は今年の正月に来て以来だ。
実家に着き、ドアを開けると母がものすごく驚いた顔で私を見た。続いて母が発した言葉に私は耳を疑った。
「あんた、なんで来たの?」
別に私は両親と仲が悪いわけでもないし、東京出張の折には度々泊まりに来ている。家の奥から父の声が聞こえる。
「ほら、だから今日来るって言ったじゃないか。」
母には娘とこの日に来ることを事前に伝えていた。その後、翌週に私が泊まりに来ることも伝えた。さらに息子が沖縄から九州に遊びに行くことも伝えた。母はこれらの情報を次のように理解したのだ。
娘は沖縄から九州に行くことになったので、私も翌週、1人で来ることに予定を変更した。
そうじゃないと母に告げると、母は改めてiPhoneのメッセンジャーを読み返して、呆れた顔で呟いた。
「あらー、ホントだ。私、どうしちゃったのかな。最近、お風呂の元栓とか閉め忘れるのよね。」
認知症をアピールしたいらしいが、風呂沸かし機のガスの元栓をいちいち閉めたり、テレビの主電源をいちいち切る人がボケてるわけなかろうが。
しかし、なぜ父は私が娘を連れて来ることを知っていたのか。母がメッセンジャーを読み上げるのを聞いていたのだろう。
両親はすでに食事を済ませたという。母にしてみれば不意打ちなので、何も準備されていない。2人とも腹がペコペコだ。仕方なく、駅前の串カツ田中で夕食をとることにして、そそくさと実家を出た。
娘は気遣う母に「おばあちゃんの顔を見れたからよかったよ。」などと声をかけていたが、もともと、妹家族と会いたがっていたのを、私が実家に行くように説得した。それがこの扱いで、日本に来てお金を使いすぎて、クレジットカードは限度額に達し、現金も残り2000円しかないとなれば、おばあちゃんからのお小遣いをあてにしていただろう。
その心象、分かることあまりある。
娘は私には小遣いをねだらないし、私も娘に小遣いを渡したことがほとんどない。だが、夏のボーナスが少しだけ出たので、妻とも話して、娘に小遣いを渡すことを決めていた。帰りのバスで不意に私からお金を渡された娘は、私に何度も念押しして来た。
「お父さん、返せとか言わないよね?間違いとか言わないよね?」
言わないよ。
50年ほど生きていれば、いろんな経験をするものだ。さほど破天荒な生き様だとは思わないのだが、あまり他人が知らないことを見知ってきたらしい。そんな私の人生の切れ端でも誰かの役に立つかもしれないなら、記録として残す価値はあるかもしれないなどと考えながらブログを更新している。(詳しく読む…)