入院中の父の死

投稿者: | 7月 11, 2020

肺炎でさいたま市の病院に入院していた父が亡くなった。

日曜日の夜中に病院から「もうそろそろです。」と妹に連絡があった。少し持ち直したので、私は予定を早めて朝一の飛行機で、沖縄からさいたま市の病院に向かった。病室に着いた時、父は妹と母が酸素吸引を手伝わないと呼吸ができない状態だったが、意識はしっかりしてるようで、私が来たことはわかったようだった。なにか話したがっているが、酸素マスクで口呼吸をしてる上に、誤嚥による窒息を防ぐために、水を飲むことを禁止され、のども口もカラカラのため、声が出なくなっていた。

少しでも水分が摂れるようにと、看護士がネブライザーを酸素マスクの脇から入れて、水蒸気を口に送ろうとするが、酸素が漏れて呼吸が苦しくなってしまうのか、父はとても嫌がった。しかし、こうしないと固くなった痰が軟らかくならないので、吸引ができない。とにかく、今は血中酸素濃度を上げるしかなかった。数値はすでに70台にまで落ちている。

主治医によれば今日の日中には最期を迎えるということだったが、母と妹によれば、これでも昨日より元気だと言う。病院側も、このまま夜まで小康状態が続くと判断したようで、ナースステーションの向い側にある二人部屋に移ることになった。

しばらくして新しい部屋の準備ができ、父が寝たままのベッドが運ばれていく。続いて家族も荷物を持って移動する。酸素をつなぎ、各種センサーをつないでひと段落すると、父は酸素吸引の補助なしで、目をつぶって呼吸をしていた。父が楽になったようだったので、昨晩から寝ていない妹を休憩室で少し寝るように促し、私と母は部屋で身の回りを片づけていた。

10分ほどして父を見ると、口が閉じていた。母が「お父さん、眠ったんじゃない?」というので、私が「そんなわけない。口を大きく開けないと呼吸できない人が、眠ったからって口を閉じるわけないよ。」と言うと、すぐに看護士を呼んだ。呼びかけをしても反応がない父をみて、看護士は慌てて主治医を呼んできた。主治医の呼びかけにも反応がない。休憩室で仮眠している妹を呼んでくるように主治医が指示する。

妹を連れて病室に戻ると、医師が生体情報モニターを起動していた。「ピー」という音が鳴る。すでに心臓が停まっていた。血圧もほとんどなく、すぐにゼロになった。父の体をゆする母に「もう、楽にしてあげようよ。」と私が声をかけた。主治医が瞳孔にライトを差し、死亡を確認した。15時35分。映画かドラマのシーンみたいに、眠るように亡くなった。

その後は遺体の引き取りや葬儀の打ち合わせなど、パタパタと時間が過ぎた。翌日も朝から葬儀の打合せがあり、そんなこんなでひと段落したのは14時前だった。腹が減った。とりあえず、飯を食いに行こう。母が父の財布を見るようにという。その金でランチを食べようと。早速、文字通り、遺産を食いつぶすことにするのだ(笑)