富山と言えばホタルイカと寒ブリ。
金沢と言えば香箱かに。
では、新潟と言えば?
私の中では「へぎ蕎麦」だ。新潟に来てへぎそばを食べずに帰る、私の中ではあり得ないのだ。吉野家に行き、牛丼はおろか、納豆だけをオーダーして食べて帰るくらい、ありえないのだ。この光景を一度だけ見たことがある。もう二十年以上前になるだろか。たしか幡ヶ谷駅前の吉野家に、カウンターで納豆だけを食べている小学生がいた。
なかなかシュールな光景だった。
今から考えてみれば、たしか小学生は二人組だった。一人が牛丼を食べようと言い出し付き合ったものの、腹が減ってないのか、小遣いがないのか、納豆だけを注文したのだろう。
「だけどさあ、蕎麦なんて全国各地にあるでしょう?」
ボソッと新潟県民がつぶやく。
「村上牛って言ったって、宮崎牛とか全国的に有名なのがたくさんあるし、村上の塩引き鮭だって、東北や北海道はみんな鮭獲れるし。新潟にはいいものがたくさんあるんだけど、なんか一番ってのがないんだよね。」
村上牛は美味い。冷めても美味い肉なのだ。
じゃあ雪国まいたけは?私の問いに新潟県民が真顔で答えた。
「ね、舞茸って美味しいと思う?」
まさかのカウンター。いや、暴投だ。ビーンボールだ。岩城でないと打ち返せそうにない。美味しいと思うけどなあ。
となりで富山県民が力説している。
「富山以外のホタルイカは、美味くないんだわ。」
鳥取でも兵庫でもホタルイカ獲れるんだけどなあ。まあ、富山湾は別格だよね。
「富山の人はさ、石川の海に富山湾とか名付けて、能登で獲れるものを富山産と称するんだわ。」
石川県民が酒の席で愚痴っていたのを思い出した。地元愛、いや地元と呼べるものがない浮草人生の私には、いまいち理解できないのであった。
50年ほど生きていれば、いろんな経験をするものだ。さほど破天荒な生き様だとは思わないのだが、あまり他人が知らないことを見知ってきたらしい。そんな私の人生の切れ端でも誰かの役に立つかもしれないなら、記録として残す価値はあるかもしれないなどと考えながらブログを更新している。(詳しく読む…)