岡山名物に思う ~世代間における価値観の違い~

投稿者: | 7月 11, 2020

岡山と聞いて思い浮かべるのは桃太郎の吉備団子。最近ではピオーネをはじめとするブドウ。B級グルメだとカキオコだのエビめしだのホルモンうどんだろうか。しかし、きびだんご以外はパンチがない。決め手に欠ける。そもそもこいつはお菓子だ。食事ではない。

岡山に来たなら食べてみたいもの。これが思い浮かばない。サワラの刺身や叩きは一部で有名だが、時期ではない。もしかしたら岡山ではギリギリ旬なのかもしれないが、すでに瀬戸内海ではサワラは獲れないのではないか。魚河岸三代目でも、岡山で食べられるサワラは壱岐で獲れたものだと描かれていた。

調べてみると、20年前に200トンまで減少した瀬戸内海のサワラは、現在、毎年2000トンほどまで増えたという。なるほど、あの漫画は2000年前半だから、当時と今では状況が異なるのか。

同様に瀬戸内海といえばシャコも有名だったはずだが、これまた獲れない。岡山市内の寿司店でも、地物が入るのは珍しくて、ほとんどが北海道産だとのことだ。原因は分からないらしいが、資源回復には禁漁が一番効果的とのことなので、獲りすぎも考えられるのだろう。福島第一原発の影響で何年も漁ができなかった福島の海は、今や好漁場とのことだ。

何かのブログで読んだ、漁師のセリフが印象的だった。

「林業は百年先を見て木を植える。農業は来年を考えて種をまく。漁師は今日のことだけ考えて魚を獲る。」

釣ったもの勝ち、獲ったもの勝ちの漁業なら、後先考えず、目の前の魚を獲るだけ獲る。みんなが同じことを考えると、みんなが豊漁になり、魚が余り、値崩れする。いわゆる豊漁貧乏だ。瀬戸内海は外海ではないから外国船が違法操業することも不可能だ。きちんと資源を管理して生産量をコントロールすれば、価値も上がり、将来を見据えて生活もできる。そうしないと若い人たちは漁業なんで見向きもしないのではないか。

根室の知人が、魚がいても漁師がいない、と話していたことを思い出した。高度経済成長を過ごした人たちはその日暮らしでも問題なかっただろうが、今の時代、若い人たちほど先のことを考える。

価値観の相違が明白だ。

古い価値観の人たちがいる限り、若い人たちは後を継ごうとは考えないのではないだろうか。