何度目の人吉?

投稿者: | 7月 11, 2020

熊本県人吉温泉。ここに来るのは何度目だろうか。五回くらいは来ているように思う。日本遺産を有する、熊本県南部の観光拠点でもある。アクセスは高速道路が中心だ。鉄道は肥薩線が通ってはいるが、日露戦争の前に開通しただけあって、急流の球磨川流域をくねくねと走るために、どうしても時間がかかる。

山あいのスイッチバック施設
山あいのスイッチバック施設

観光列車が走るにはいいところであり、SLも走っているが、これも皆がよく知るC11やD51ではない、小さな機関車だ。線路の路面がそれほどしっかりしていないために、重いSLを走らすと線路が持たないとのことである。D51の重量125トンに対し、現代の大型ディーゼル機関車でも重さは84トンである。

国鉄8620形蒸気機関車
国鉄8620形蒸気機関車

平成になって開通した九州自動車道の八代ー人吉間は、地図見てもほぼ真っ直ぐに八代市に向かっていて、大きな橋も長いトンネルもある。距離も45キロなのに対し、国道216号線を通ると60キロである。そのため、地元では車から高速バスで新八代まで行って新幹線に乗るのが最も早いことになる。

また、高速道路を使えば50分ほどで鹿児島空港に着く。なので日常の足としての鉄道の利用はどうしても減少せざるを得ないのだ。このような路線は全国いたるところにある。日本は自然災害の多い国だ。何か災害があれば、道路だけでは持たなくなる。

観光列車
観光列車

しかし、国の予算は高速道路にはついても、鉄道にはつかない。元々は国鉄だ。完全民営化したからとはいえ、公共性の高い鉄道をすべて民間でやれとなれば、地方によってはJR北海道のように破綻寸前になるのは目に見えている。特に北海道は長い国境をもつ。他の地方とは事情が異なる。ただ単に採算性だけでは語れない部分が多々あるはずなのだ。

今は高速道路も民営化された。なのにいまだに高速道路が税金で建設されるのは、上下分離方式だからだ。税金でつくった道路は国の資産だが、それを貸すことによって建設費を回収する。借りた方は運営することで利益を出し、賃料を支払う。ならば地方の鉄道も同じようにするべきではないか。

地域に住む人の足ではなく、外から地域にひとを運ぶ手段として、鉄道は道路にない魅力と効率性を持っているはずだ。そのためには、戦前に開通した路線を大幅に見直して、距離を短縮し、時速160キロで運転できるようにするべきと思う。そうすれば海外から来る三千万人もの観光客を、日本の隅々にまで効率よく運ぶことができるはずだ。